ファクタリングの意味や特徴と留意点
ファクタリングは融資ではなく買取
日本の商慣習は信用取引をベースにしているため、商品やサービスの提供と、対価の支払いが同時というケースはまれです。通常は納品後の請求書発行を受けて、定められた期日までに支払われる構造になっています。このタイムラグの間に売掛債権が発生するために、手持ち資金やキャッシュフローが潤沢ではない中小企業の場合は一時的に資金繰りが苦しくなりがちです。こうした場合は融資を受けることで事業継続をするのが、長年にわたる国内の商慣習です。かつては銀行系の融資がほとんどでしたが、近年はスピーディーな融資が受けられるメリットがあるビジネスローンが脚光を浴びています。
ビジネスローンは銀行融資に比べて審査が合理的でスピーディーというメリットがあり、多くの中小企業にとって必要なビジネスパートナーです。中小企業庁がまとめた2016年版中小企業白書概要によれば、国内の企業の99.7パーセントは中小企業ですから、ビジネスローンは日本経済を支える推進力となる融資です。こうした中、最近耳にするようになったのがファクタリングです。
ビジネスローンとの最大の違いは、ビジネスローンは主として中小企業や個人事業者が借りる事業資金という融資なのに対し、ファクタリングは事業主が持っている売掛債権の買取サービスという点です。ファクトは要素の他に、仲介者という意味もあり、資金調達の仲介者という意味合いで使われています。
事業主にとっては資金繰りに役立つという点では同じですが、両者は仕組みや特性が異なります。ファクタリングの活用については、ビジネスローンとの比較検証を行い、十分な調査をしたうえで慎重な判断が必要です。
ビジネスローンとファクタリングの差異
主として、中小企業が資金調達手段として活用するのがビジネスローンです。審査に時間がかかる銀行融資と比較すると、審査がスピーディーで簡便な点が大きなメリットです。これに対しファクタリングは融資ではなく売掛債権を買取るビジネスです。運転資金の調達手段としては同じような位置づけと思われがちですが、実際は全く異なる枠組みです。
両者の違いの一つは金利と手数料です。ビジネスローンは融資なので、そこに発生するのは金利です。会社によって金利は異なりますが、中小企業経営者にとっては経営的に妥当な金利の会社を選択できます。一方ファクタリングの場合は融資ではなく売掛債権の買取ですので、金利ではなく手数料が発生します。この手数料は、どのような形態でのファクタリングにするかで違うため注意が必要です。どこに信用性を置いているかという点でも両者は異なります。ビジネスローンの場合は融資を受ける企業の経営状態が重視されます。ビジネスローン独自によって銀行系よりスピーディーに審査結果が出ますが、融資審査であることに違いはありません。
ファクタリングの場合は売掛債権を保有している中小企業の経営状態ではなく、売掛先企業の経営状態を重視します。審査はありますが、比較的容易に資金調達ができるのは事実です。3社間ファクタリングという方法を選択する場合、売掛先企業にその事実を通知しておきます。この結果、長年付き合いのある売掛先企業が信用不安を抱く懸念もあります。その意味では、中小企業の経営者には資金調達の簡便性だけにとわられない経営判断が求められます。
ファクタリング利用の場合の5つの留意点
ビジネスローンの融資とファクタリングは、いずれも資金調達の手段ではありますが仕組みは大きく異なります。銀行と比較し融資を受けやすいという理由でファクタリングを安易に利用すると、トラブルになることもあるので十分なチェックと冷静な判断が求められます。
第1のチェック項目は、手数料の比較です。業者によって異なるので比較することが重要となってきます。
第2に所定の文書に手数料が明記されているかどうかです。明示されていない場合は白紙に戻す決断も必要です。
第3は不自然に安い手数料の精査です。ファクタリングビジネスにも常識的な手数料の相場はあります。これから逸脱している場合は、明確な理由が存在しているのか確認しましょう。
第4に手数料の変動です。一般的に、初回の手数料は高くても2回目以降は安くなるはずですが、高いままというところもあります。
第5に手数料以外の費用を確認することです。業者によっては印紙代や専門家への報酬などを相場より高く請求してくるケースもありますので、手数料だけで決定するのは早計です。
ファクタリングは運転資金に苦しむことが多い中小企業にとって、売掛債権が早期に現金化されるのでキャッシュフローが好転したり営業強化につながったりする効果も期待できます。その意味では、ビジネスローンと同様にうまく活用すればメリットもあります。
ただ、ファクタリングを利用するということは、サラリーマンでいえば給料の前借りのような行為ともいえるので、一度利用すると連続して利用せざるを得ないスパイラルに陥る懸念もあります。ビジネスローンとは異なる営利哲学で動いている面もあるので、契約内容をしっかり確認して利用することが重要です。